2017/03/01

第89冊 脳の専門家による神秘体験の究極か。『プルーフ・オブ・ヘヴン』ほか

いきなり私事ながら。

100歳で大往生をむかえた我が祖父は、70代の頃に
臨死体験をして、それが大層気持ち良かったらしいので、
「死ぬのは怖くない、いつお迎えが来てもいい」と毎年
繰り返しながら30年近くを生きました。

そんな祖父の言葉を聞いて育ったおかげか、
私は臨死体験に物凄く興味があるのですが、
幸か不幸か死にかけることなく馬齢を重ねております。


今回の本は、臨死体験本のある意味極北。
第一線で活躍する脳神経外科である著者が、
死後の世界ないしは天国と思われるところで
過ごした経験を語った本です。


プルーフ・オブ・ヘヴン--脳神経外科医が見た死後の世界


医療従事者が神秘体験をするパターンというのは、
ジル・ボルト・テイラーの『奇跡の脳』を思い出させます。
左脳の機能がどんどん喪われていく中で、安らぎの境地を
体験します。



奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき

医師も人間ですから神秘体験のひとつやふたつ、したって
いいと思うんですが、やはり脳の専門家が神秘体験をする、
ってところが非常にキャッチ―ですよね。

日本で数年前に売れた『人は死なない』も、たぶんERの先生が
書いたから話題になったのであって、誰が書いたか知らずに
拾い読みしたら、ただのオカルトファンの妄言に
見えてしまう可能性もあります。

ものごと、何が書かれているか、だけでなく、誰が書いたか、も
重要である、という話ですが、それはさておき。

この『プルーフ・オブ・ヘヴン』の面白いところは、
著者アレグザンダー医師が、自分の治療にあたったスタッフとの
たび重なるカンファレンスを通じて「自らが神秘体験をした時の
脳は、いかなる意識も持ち得ない状態だった」ということをとにかく
厳密に検証したことです。

あえて懐疑的に見るならば、「意識という装置の天才的後付け
こじつけ能力」によって、あとから神秘世界の記憶が生成されていった、
と考えることもできますが、死後の世界がないとしても、そんなヴィジョンが
見られる裏モードが脳にあるのだとしたら、なかなか楽しそうです。

臨死体験、死ぬまでに一度はしてみたい……最低一度はあるのかな?