2015/03/17

第62冊 霊界との清く正しいお付き合い 『いかにして高次の世界を認識するか』

 
いかにして高次の世界を認識するか
ルドルフ シュタイナー, 松浦 賢


私がメシのタネにしている代替医療の
業界というのは、面白い人の巣窟で、
霊が見える、オーラが見える、悪い所が
黒く見える、みたいな話は枚挙にいとまが
ありません。

私自身は、今のところ、そういうのは
まったく見えません。

見えたら仕事上便利だろうなぁ、とは
思うのですが、話のタネとしてオカルトは
好きなのに、仕事上役立つような特殊知覚は
発現しておりません。

で、この本も、何かの間違いでそういう世界が
見えると、便利だろうなあ、という下心で手に
とりました。

で、本を読んで叱られた気分になるという、
素敵な体験をしました。

珍しく読みやすいシュタイナー


没後90年経ってなお、ルドルフ・シュタイナーの
思想はおもに教育哲学の世界とオカルトの世界に
またがって、強い影響力を持ち続けています。

が、その著作は、人智学といわれる独自の
思想体系に裏打ちされていることもあり、
ナカナカにハードルの高い、読みにくいものが
多いのですが、この本は、そんなシュタイナーの
本としては格別に読みやすいです。

そして、タイトルからすると、霊視能力の
開発ノウハウが学べる本、という印象ですが、
さすがはシュタイナー、手っ取り早くオーラを
見たいとか、手っ取り早くヒーリング能力を
身につけたい、みたいな俗流(?)スピリチュアル本とは
格が違うのです。

……というところを、今回は取り上げたいと思います。

ちゃんとした人になりなさい!



まず最初の「条件」として、以下のようなことが語られます。

周囲の世界や自分自身の体験のいたるところに、崇拝や尊敬の感情を呼び起こすものを探さなくてはなりません。たとえば私がある人に会った時に、その人の欠点を批判的に見ると、私のなかから高次の認識能力が奪われます。(p11) 
世界や人生に対する感嘆や尊敬や崇拝の感情で満たしてくれるような思考のみを意識に上らせるようにすると、私たちは早く向上することができます。(p12)

この「良いこと探し」「人や世界をリスペクト」ですが、私もやる前は
正直ちょっとバカにしてましたが、実際にやってみると、驚くほど
メンタルの問題が落ち着きます。

逆に言えば、Facebookで友達の幸せに嫉妬するような
精神状態で霊能力なんて身につけてもロクなことはないってことです(笑)。

内面の平静の時間を生み出しなさい。そしてこのような時間に、重要な事柄と重要でない事柄を区別する事を学びなさい。(p20)  
学徒は、みずからの喜びや悲しみや心配事や、経験や行為を、自分自身の魂の前によぎらせます。そして、このとき、ふだん体験しているあらゆる事柄をより高い観点から眺めるようにします。(p21)
自分で決めたとおりに外界の印象の作用を受け取る能力をみずからのうちに育てなくてはなりません。(p28)

外界の瑣末なことに振り回されない自分を、まず、つくりあげる。

あの売れに売れたビジネス思想(?)書『7つの習慣』風に言えば、
「重要事項に着手せよ」「刺激と反応の間を広げよ」ってやつですね。

説教くさいなぁと思う方もあるかもしれませんが、
マスコミに登場する自称霊能者の胡散臭さを思えば、
「高次の世界」を認識する前に、その認識にふさわしい人格を
身につけよ、というのは至極まっとうな考えだと思います。

いや、そこまでいかなくても、自分には他のヤツがわからないことが
わかり、見えないものが見えている、という自信に溢れたヤツが、
どれくらいイヤなヤツかを想像するだけでも十分でしょう(笑)。

霊の世界がどうこう言う前に、ちゃんと働け


面白いのは、高次の世界を認識するための訓練にただ
没頭するような生き方はむしろ推奨せず、

数分間訓練を行ったら、私たちはそれをやめて、
おだやかな気分で日常的な仕事にとりかかるように
します。訓練に関わる思考を、私たちの日常的な仕事のなかに
いっさい紛れ込ませてはなりません(p54)
どのような仕事にも、私たちが人類全体のために奉仕する可能性が
含まれています。「私にとって、この仕事はひどすぎる。私は別の
仕事に向いているはずだ」と考えるよりも、「このささやかな仕事を
(あるいはいとわしいと思われるような仕事を)人類全体はどれほど
必要としているか」ということを認識する方が、私たちの魂は、
はるかによい影響を受けます。(p118)

と、日常的な仕事をシッカリこなすことが重要と考えている点。

まあ、日々、

「ハイヤーセルフが」
「次元上昇が」

なんてことばかり言っている人になるよりは、
日々淡々と働き、でもそういう世界も実は
コッソリ分かるんです、という人になったほうが
カッコイイよな、とは私も感覚的に思います。

が、アカシックレコードを認識できてこの世のこれまで
起きたことが霊視出来るんだ.、というルドルフ・シュタイナーが、
訓練は生活に支障をきたさない程度にね!と何度も念を
押しているのは、チョット面白いところです。

で、だんだんこの時点で、「見えたら便利だよねー」
みたいな気分の私は、どうやら叱られている気分に
なってきました(笑)。

で、結局超能力は?

物質的・感覚的な世界における机や椅子と同じように
感情や思考は現実的な事実である、ということを
完全に理解するとき、私たちは高次の世界に
おいて自分の位置を確認することができるようになります。(p42)
……とあるように、本書で強調されているのは、感情や
思考をコントロール下におくことです。

そのために、瞑想や周囲の風景、音、物などへ意識を
集中、没入させることで、「高次の世界」を認識していくという
具体的な方法は色々と本書の中で紹介されています。


とはいえ、基本的には忍耐が要る、ということが繰り返し述べられ、

しばらくの間は、静かに自己の内面に留まっている
状態を保ちなさい。『いつか私がふさわしい段階まで成熟したら、
生じるべきものが生じるだろう』という思考を自分のなかに深く
刻み込んだら、慣れ親しんだ日常の仕事に取り組みなさい。
そして高次の力のなかから、何かを好き勝手に自分のほうに引き寄せ
ようとする態度を厳しく戒めなさい(p107)

と、「超能力で色々いいことづくめヒャッハ―みたいなことは思うなよ」、
と戒められております(笑)。

まあ、現世で無敵になる裏コマンドとかは、無いってことです。


ごめんなさい、シュタイナー先生。


以下余談。

おそらく唱えているシュタイナー自身もこの本で書かれているような態度を
完全に貫いた、ってことは多分できていなくて、理想というか、努力目標とか、
そういった類のものだったのだとは、思います。

シュタイナーがアカシックレコードが●●できるとかいう話は、シュタイナー
自身がこの本で語っている戒めを踏み越えているように思えますし……。

逆に言うと、それだけ「あっちの世界」の魅力は強すぎるということかもしれません。

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