2015/02/09

第56冊&第57冊 毀誉褒貶の激しい怪エンタメ作 『ジェノサイド』


 ジェノサイド 上 / 高野 和明
 ジェノサイド 下 / 高野 和明


アフリカの奥地に誕生した、人類を滅ぼす可能性のある、
まったく新種の生命体の正体や、いかに。


SFでミステリーで、息子のために戦うおっさんや、
パッとしない感じの大学院生が、運命に翻弄される
うちにカッコよく見えてくる、ハリウッドのアクション映画っぽい
展開にミステリー要素や生命科学系のネタを叩きこんだ、
贅沢なエンタメ作品です。


この作品、レビューの毀誉褒貶の割れ方も見ものだったりします。
というか、ミステリーの仕掛けに踏み込むのも野暮なので、
今日はその毀誉褒貶のほうにしか触れません(笑)。


タイトルから推察されるように、虐殺に至ってしまう
人間の残虐性、みたいなことが作品の中でも重要な主題に
なっておるのですが、まあ、それに関して、小説内の「語り手」が
唐突に語る政治的主張が鼻につく、といった批判がとにかく
多いのです。


単純に内容がつまらなかった、という批判は少数派ってところが
面白いところで、おそらくなまじエンタメ作品として面白いのが、
可愛さ余って憎さ百倍というか、なぜそれなりに美味しい料理なのに
妙な調味料を横からブチ込んだんだ、興ざめしたじゃねーか!

という怒りなんですよね。


単純に面白くないと切って捨てられる小説は数あれど、
「余計な部分さえなければ」とこれだけ叩かれる「面白い小説」
ってのもちょっと珍しいと思います。


文庫化に際して、その気になれば叩かれるポイントを削る or 変更
することもできた筈なのに、そうしていない、というのも凄いです。


いっそのこと、『高い城の男』のように、実はこの世界では
○○大虐殺は本当にあった、という異世界なのだと思えば
いいのではないでしょうか。


余談
まあ、disり&虐殺つながりで、よろしければ、こちらも読んでやってください。

参考:第2&3冊 disる言葉が、今日もどこかで増えてます
    『呪いの時代』内田樹 & 『虐殺器官』伊藤計劃



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